ZOU-NO-HANA GALLERY SERIES vol.3 「田中昌樹展 ー海のお墓に住むー」
開催期間: | 2020年11月24日(火)~12月10日(木) |
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会場: | 象の鼻テラス |
アーティスト: | 田中昌樹 |
推薦者; | 吉田紗和子 (アンスティチュ・フランセ横浜 文化担当) |
主催: | 象の鼻テラス |
象の鼻テラスでは、コロナ禍で表現発表の機会を失っているアーティストの支援のため、象の鼻テラスの大きなギャラリー壁で展開するギャラリーシリーズ(ZOU-NO-HANA GALLERY SERIES)を開催します。横浜を拠点に活動するアーティストを中心にご紹介します。
第3弾は、紙を素材に軽やかで鮮やかな平面による立体を制作するアーティスト・田中昌樹の展覧会です。本展は、アンスティチュ・フランセ横浜の文化担当を務める吉田紗和子氏のアーティスト推薦による企画です。
期間中には、アーティストが滞在制作し展示を日々変化させていきます。象の鼻テラスの空間全体が展示空間となり、成長するように変化を続ける展覧会をお楽しみください。
■滞在制作
会期中、アーティストが象の鼻テラス内のどこかで制作を行います。
そして日々作られる作品は、展示に加えられていきます。
滞在制作お休み日(予定):11月25日(水)、12月2日(水)
■ワークショップ「田中工作教室」
工作教室の講師のお仕事もしている田中昌樹さん。
自由な発想で思いのままに手を動かし作品を生み出す感覚を経験する、田中工作教室を開講します。
自由な発想で思いのままに手を動かし作品を生み出す感覚を経験する、田中工作教室を開講します。
開催日:11月28日(土)、29日(日)、12月5日(土)、6日(日)
時間: 14:00〜15:00
参加費:無料
参加費:無料
対象:5歳以上
定員:5名
参加方法:事前申込、先着順(こちらの申込フォームよりお申込ください) ※終了しました
参加方法:事前申込、先着順(
《untitled》paper on paper, acrylic, inc 2020
《untitled》paper on paper, acrylic, inc 2020
《untitled》paper on paper, acrylic, inc 2020
■アーティストプロフィール / ARTIST PROFILE
田中昌樹 / Masaki Tanaka
1996年 神奈川県横浜市生まれ、在住。東京造形大学卒業。
主な個展として、2018年「ZONE」、「シケイン」(東京造形大学/東京)、「Assemble」(SYP art space/東京)。主なグループ展として、2018年「SLIDE」(CS-LAB/東京)、「Beginnner's luck」(mime /東京)、「SOLID SLIDER : street」(CS-LAB/東京)、「bud」(ZOKEIギャラリー/東京)、「gimmick overlap」(ターナーギャラリー/東京)、2020年「スピードRag」(gallery TOWED/東京)。企画に「When a Student Becomes an Artist」(mime /東京)など。
『海のお墓に住む』
深い 深い 近い 海
ここはどこで
生まれる前は怖くない
文化と地面 繋がって
泥濘んだその土地を
海を埋める 陸になり それを掘ると空になる
大きな赤 闇が降り 小さな光
様々を入れてかさばったその身体
ここは東で 東に行けば西に着く
近づくと濡れ
空はくもり 大きな石板 境線は滲んで
■推薦コメント / RECOMMEND COMMENT
田中昌樹さんの魅力は、何といってもその恐るべき純度の高さとしなやかさである。ひとたび新しいアイデアに心が灯ると、目を見張るような速度で迷いなく手を動かしては次々と作品をつくり出し、こちら側はどこに連れて行かれるかわからないスリルを抱えながら、更新され続けるその姿を来たか来たかと追いかける次第だ。そのようにして空間に増殖するかのように鮮やかに生まれていく作品群は、多種多様に呼吸する生きもののようでもあり、力強く生き生きとした佇まいを魅せてくれる。それはいくばくか謎をはらませた不思議な存在であり、同時に、私たちが手にしたことのあるような、馴染みのある日常と地続きにある素材が用いられているため、どこか親しみを感じさせてくれる人懐っこさがある。さらにまだ終わらないのは、よく近づいて目を凝らしてみると、今度は思いがけぬ発見があり、時にはそれが宇宙的なまでに思考が広がり、壮大なスケールで視界が開かれる体験が待っていることだ。
しかし今回の展示については、実のところ、会場にて現在進行形で田中さんが滞在制作をしながら展開されていくため、まだ誰もがその全貌をつかむことができていない。展示が終わるまでのお楽しみと言うべきだろうか…
一方で興味深いのは、美学的な問題として、田中さんは一貫して「平面」と「立体」、「絵画」と「彫刻」の境目についてどう考えるかという問いを探求しながら制作を行っていることだ。それはいささか大胆な見解かもしれないが、田中さんが日課としているランニングを通しても垣間見える、「地面」の起伏への関心とも関係があるように思える。横浜の保土ケ谷にある峰沢町に生まれた田中さんは、上り下りを繰り返す坂道の多い地形で育ち、常に地面のリズムを感じながら、地球との一体感を感じるのが好きだったそうだ。次第に横浜の開発が進むと、埋立地の平坦な道が増えていき、「自分が立っているのは、コンクリートの上なのか、海の上なのか、地球の上なのか」と考えをめぐらすようになったと言う。この田中さんの足裏に刻まれた横浜の地面の記憶は、今回の展示をより深めるためのヒントになるかもしれないと密かに思っている。
ぜひ展示を楽しまれた後は、「田中昌樹展 ー海のお墓に住むー」という一つの地図を手がかりに、ふらりと横浜の街を歩いてみてください。今まで見たことのない景色に出会えるかもしれません。
吉田紗和子
(アンスティチュ・フランセ横浜 文化担当)