本作品は、ダンサー・俳優といったそれぞれ異なるバックグラウンドを持つメンバーにより構成されています。
個であることを大切にしながら、集団でひとつの作品を作ること。8カ月に及ぶリハーサルやディスカッションを繰り返すなかで、まずはそれぞれが自らのモチベーションを見つめ、方向性を確認し、時には葛藤し、そのなかからお互いに違いを共有するなどして、少しづつコミュニケーションを練り上げていきました。
このようなプロセスは、いつしか作品のひとつひとつのシーンを具体的に創作するプロセスと重なっていきました。
コミュニケーションから生じる、距離感や温度感、間合いや呼吸。そんな人と人とのあいだに共有された、ある"薄い領域"みたいなものを、「のりしろ」と呼んでみました。ひとりひとりがこの領域を重ね合わせることで、そこからあらたな身体像が透かし見え、浮かび上がってくればと思っています。
中村達哉
■公演概要
2011年度STスポット/舞台表現者育成プログラム
ヨコラボ'11 A集団創作コース 最終発表『のりしろ』
構成:中村達也(コースリーダー)
創作・出演:吉川千恵(アシスタント)、いづみれいな、井上真由美、中山有子、福永ひろ美、松田千尋、
安藤真理
舞台監督:鈴木康郎、湯山千景
照明:森規幸(balance.inc)
音響:牛川紀政、林あきの
【メンバー プロフィール】
中村達哉(コースリーダー)
1998年より、ダンスカンパニー「イデビアン・クルー」に参加。また、パフォーマンスシアター「水と油」や山下残の作品などに出演。他に、野外でのパフォーマンスや、ミュージシャンや美術家など、他のジャンルのアーティストとのコラボレーションも多数行う。 2010年から「ヨコラボ」集団創作コースオブザーバーを担当。2011年StudioBankArtレジデンスアーティスト。
吉川千恵(アシスタント)
1985年生まれ。幼少モダンダンスを習い。2008年日本女子体育大学舞踊学専攻卒業。2009年よりDanceCompanyBABY-Qにダンサーとして参加。またダンスが見たい!新人シリーズ8にソロ作品『han』を発表。また音楽制作も行い、本作では音源を提供している。
いづみれいな
ダンスパフォーマー。近年、様々なアーティストとのコラボレーションを行っている。また2010年にマノリツコと、独特な間とリズムを特徴に展開する、ダンスユニットflep funce!を結成。昨年の秋から来夏にかけてシリーズ作品の発表をスタートさせ、舞台やイベント等で精力的に活動中。2011年2月グラインダーマン作品『MUSTNG colors』に出演。2011年7月STスポット企画・KENTARO!!監修「N.N.N.2」にてflep funce!作品『アチラコチラソチラ』を上演。2011年11月flep funce!作品〜明日、冷静になったら考えよう〜シリーズ第1弾『純子さん(仮名)と可菜子さん(仮名)』を発表。
井上真由美
「陶芸」という「個」での作品制作をする傍らで「人」と関わり作り上げるもの作りへの探究心から近年はコンテンポラリーを元ノイズム、平原慎太郎に学び作品に取り組む。出演作品:2008年『Human Noise』@荻窪 G-Screw Dance Labo、2009年『Birthday』@神楽坂セッションハウス、2010年『en』@中目黒ウッディシアター、振付:平原慎太郎。本作では衣裳も担当。
中山有子
現代演劇協会附属昴演劇学校卒業後、ダンスを石井せつ子に師事。現在フリーの役者として活動。主な出演作品はロメオ・カステルッチ演出『神曲-地獄篇-』、『わたくしという現象』、KUNIO07『文化祭』、やなぎみわプロデュース『カフェ・ロッテンマイヤー』、中屋敷法仁演出『戯伝写楽-その男十郎兵衛-』、舘そらみ演出 ガレキの太鼓のぞき公演 同窓会篇等。
福永ひろ美
神奈川県横浜市出身。6歳よりモダンバレエをはじめ、現在はコンテンポラリーダンスをメインに活動。2011年に自作ソロ『trasition』を発表。今回はバレエテクニックに依存しない動きと表現の可能性を探る事に興味を持ち参加。
松田千尋
1986年11月21日生まれ。東京都出身。フリーの役者。主な出演作品『どん底』『東海道四谷怪談』『弟の戦争』脚本演出:鐘下辰男(演劇企画集団 THE ガジラ)、『谷間の女たち』演出:森新太郎(演劇集団円)ほか。次回出演作品、Pityman『象を見にくる』2012年3月13日〜22日、作演出:山下由、出演:福島崇之(こゆび侍)、松田千尋@絵空箱。
安藤真理
2008年よりチェルフィッチュに数作参加。
ヨコラボについて
STスポットでは、2009年5月より、「ヨコラボ」と称する新たな取組みを開始しました。このプロジェクトは、長年開催してきた若手作家育成プログラム「ラボ20」という企画から生まれたものです。身体表現作品を作りたい、「振付」について考えたいあるいは「振付をしたい」「ダンスをしたい」という方を主な対象に、若手の舞台表現者を育成するため、表現の創造プロセスを劇場及び講師と参加者が互いに共有しながらそれぞれの創作をつき詰めていくワークショップとなります。年間を通じてワークショップや創作リサーチを中心に創作活動を行い、アーティストとしての自覚と方法論を確立させようと試みます。昨年度は「ヨコラボ'11」では中村達哉をコースリーダーとして進めている「集団創作コース」、手塚夏子をコースリーダーとして進めているダンスの調査研究コース「民族芸能調査クラブ」、そして短期ワークショップ/レクチャーシリーズでは振付家、演出家はもとより、批評家、美術家のワークショップを開催しました。